さつまいもは、犬にとって害のある成分が含まれていないため、食べることができます。
栄養価が高いさつまいもは、犬にも積極的に与えたい食材のひとつですが、腎臓病やシュウ酸カルシウム結石など、持病がある犬に与える際には注意が必要です。
今回は、さつまいもを与える際に注意が必要な犬について、ペットフーディストの観点から解説します。
さつまいもの主な栄養素
さつまいもの主な栄養素はこちらです。
- 糖質
- 食物繊維
- カリウム
- 銅
- ビタミン
- βカロテン
- ヤラピン
- クロロゲン酸
栄養素の解説や注意点は、以下の記事をご覧ください!
持病がある犬はさつまいもに注意する
さつまいもは、犬にとって害のある成分は含まれていませんが、病気によっては有害となるものもあるので注意が必要です。
ここでは、さつまいもを与える際に注意しなければならない、代表的な病気をとりあげます。
腎臓病
さつまいもに含まれているカリウムは、体内の水分量を調節する機能があり、犬に必要な栄養素のひとつです。
慢性腎臓病が進行すると、余分なカリウムを体外に排出できなくなるため、カリウムが蓄積され、高カリウム血症になるおそれがあります。
高カリウム血症は、神経症状や吐き気、重症化すると不整脈や心停止の可能性がある病気です。
そのため、慢性腎不全と診断されている犬は、腎臓に負担をかけないようにカリウムの過剰摂取を避ける必要があるのですが、制限するかどうかは病状によって違います。
腎臓病はタンパク質やリンの摂取制限がありますが、それよりも慢性腎不全が進行した病状からカリウムの摂取制限が必要になるといわれているからです。
さつまいもにはカリウムが豊富に含まれています。
カリウムは水溶性のため、さつまいもを小さく切ってから水に長くさらしたり茹でこぼすことで、カリウムを減らすことができます。
少しでもカリウムを減らしたい方は、お試しください。
カリウム制限が必要かは病状によって違うので、さつまいもを与える際はかかりつけの獣医師に相談しましょう。
シュウ酸カルシウム結石
さつまいもにはシュウ酸が多く含まれています。
シュウ酸はカルシウムと一緒に摂取すると便として排泄されますが、シュウ酸を多く摂取すると腸で吸収して尿の中に出てしまい、尿に含まれるカルシウムとシュウ酸が結合することで結石ができます。
- シュウ酸は、特にさつまいもの皮に多く含まれているため、皮を取りのぞきます。
- シュウ酸は水溶性なので、食べる大きさに切ってからたっぷりのお湯でゆでると、シュウ酸を減らすことができます。
- ゆで汁にはシュウ酸が溶け出しているので、必ずゆで汁は捨ててください。
さつまいもは「ゆでる」以外に、「蒸す」「焼く」「電子レンジで加熱する」といった調理法がありますが、お湯でゆでるか水にさらさないと、シュウ酸を減らすことはできません。
さつまいものシュウ酸を減らして愛犬に与えたい場合は、上記の方法が効果的です。
しかし、シュウ酸カルシウム結石の犬や、シュウ酸カルシウム結石を経験したことがある犬は、さつまいもは与えない方がよいでしょう。
心臓病
「腎臓病」で前述した通り、余分なカリウムが体外に排出できずに蓄積されてしまう高カリウム血症は、重症化すると不整脈や心停止の可能性があります。
心臓病はカリウムが体にたまりやすいので、カリウムが豊富に含まれているさつまいもを与える場合は注意が必要です。
心臓病の犬や、心臓に不安がある犬にさつまいもを与える際には、かかりつけの獣医師に相談してください。
胆泥症
胆泥症は、胆嚢に泥状の胆汁がたまってしまう病気です。
中高齢になると多く見られ、健康診断で偶然発見されることもあります。
軽度の胆泥症は特に症状がみられませんが、進行すると合併症を引き起こすこともあるため、注意深く対処しなければならない病気です。
胆泥症は、内分泌疾患を併発することが多いので、甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症、高脂血症などを患っている犬は注意しましょう。
さつまいもは糖質が多いため、多量に摂取すると胆泥症の原因となる疾患につながりやすくなります。
胆泥症の進行具合や原因となる疾患などによって適したフードや注意点は異なりますので、胆泥症の治療中の犬はさつまいもを与える際にはかかりつけの獣医師に相談してください。
糖尿病
さつまいもには食物繊維が豊富に含まれていて、体内でゆっくり消化・吸収されるので、食後の血糖値の上昇がゆるやかです。
しかし、糖質も豊富なので、さつまいもを多量に摂取すると糖尿病が悪化する可能性があります。
さつまいもを与える際は、おやつやフードのトッピングとして少量を与えるようにしましょう。
心配な方は、かかりつけの獣医師に相談してください。
犬が下痢の時にさつまいもを食べても大丈夫?
食物繊維が豊富なさつまいもは、下痢の時に与えてもよいのでしょうか。
下痢の場合は、胃腸を休ませることが先決です。
できるだけ消化のよいフードを少量づつ与えましょう。
いつものごはんがドライフードの場合は、水でふやかすと消化がよくなります。
また、水分量が多いウェットフードは消化がよいので、食べ慣れているウェットフードがあれば、そちらを与えてもよいでしょう。
お腹の調子が整ってきたら、食物繊維が豊富なさつまいもを与えてみます。
食物繊維は整腸作用や便を硬くする効力があるので、さつまいもを与えるのは効果的です。
しかし、食物繊維を多量に摂取すると胃腸の負担となり、また下痢をする可能性もあるので、様子を見ながら少量づつ与えましょう。
さつまいもでアレルギー症状はでる?
食物アレルギーは、タンパク質に対して免疫が異常に反応することで発症します。
さつまいもはアレルギーを起こしにくい食材ですが、わずかにタンパク質が含まれているため、アレルギー症状がでることもあります。
はじめて犬にさつまいもを与える際には、少量にして様子を見、他に新しい食材を与えないようにしましょう。
そうすることで、もしアレルギー症状がでた時に、どの食材が原因なのか特定できます。
- 皮膚が赤い
- 身体のかゆみ
- 特定の部位をかきむしったりかんだりする
- 毛が抜ける
- 嘔吐
- 下痢
- 1日のうんちの回数が多い
- 食欲不振 など
アレルギー症状は数日たってから現れることもあります。
少量づつ与え、愛犬の様子を見て、アレルギー症状がでた場合は動物病院を受診しましょう。
銅を制限した方がよい犬種は注意する
銅はミネラルのひとつで、体内の多くの代謝反応に必要な成分であり、犬にとっても大切な成分です。
さつまいもには銅が豊富に含まれています。
一部の犬種で、銅が肝臓に過剰に蓄積してしまう遺伝の病気があることがわかっていますので、注意が必要です。
- ベドリントン・テリア
- ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア
- ダルメシアン
- ラブラドール・レトリーバー
- ドーベルマン・ピンシャー
- コッカー・スパニエル など
心配な方は、獣医師に相談しましょう。
まとめ
今回は、さつまいもを与える際に注意が必要な犬についてまとめました。
さつまいもは犬にとって害のある成分が含まれていないため食べることができますが、病気で食事制限をされている犬や、服薬中の犬は、かかりつけの獣医師と相談してから与えましょう。