「秋刀魚」(さんま)は、文字通り秋に旬を迎える魚です。
秋になると、愛犬と一緒にさんまを味わいたいという方もいらっしゃるのではないでしょうか。
犬はさんまを食べられますが、与える際にはいくつか注意が必要です。
今回は、さんまの頭や骨は食べてよいのか、さんまの栄養素、与え方、適量、注意点などを、ペットフーディストの目線で詳しく解説します。
犬はさんまを食べられる
さんまは、犬にとって健康を害する成分が含まれていないため、食べることができます。
さんまを焼くと食欲をかきたてる独特な匂いがするので、さんまを食べたがる犬も多いのではないでしょうか。
頭は食べても大丈夫?
さんまの頭はかたくて骨が多いので、犬に与えると、口や喉、消化器官を傷つけてしまうかもしれません。
また、消化不良をおこし、嘔吐や下痢をする可能性もあるので、さんまの頭は犬には与えない方が安心です。
特に、消化不良をおこしやすい子犬やシニア犬は注意してください。
骨は食べても大丈夫?
さんまには小骨がたくさんあります。
人間は小骨を意識してしっかり噛んで食べることができますが、犬は元々よく噛んで食べる習慣がなく、丸のみすることが多いです。
骨をよく噛まずに食べると、頭同様、口や喉、消化器官などを傷つけてしまうかもしれません。
そのため、犬にさんまを与える時は、あらかじめ小骨を取り除きましょう。
消化不良をおこしやすい子犬やシニア犬にさんまを与える場合は、丁寧に小骨を取り除いてから与えてください。
刺身を食べても大丈夫?
犬に生のさんまを与えてもよいのでしょうか。
生のさんまには、寄生虫であるアニサキスが潜んでいる可能性があります。
アニサキスは熱に弱く、加熱することで死滅するといわれているので、犬には刺身ではなく、加熱したさんまを与えましょう。
さんまの主な栄養素
次に、さんまの主な栄養素をご紹介します。
タンパク質
タンパク質は、身体をつくり、生命を維持する働きを担う、生きる上でとても重要な栄養素です。
タンパク質は20種類のアミノ酸からなる栄養素で、さんまは、体内で合成できない「必須アミノ酸」がバランスよく含まれているため、良質なタンパク質といえます。
良質なタンパク質は、少量で必要なタンパク質を確保できるので、消化への負担を軽くし、効率よく栄養素を吸収できるのです。
ビタミンD
さんまにはビタミンDが豊富に含まれています。
ビタミンDは、骨の成長や骨を丈夫にする重要な働きをし、また、カルシウムとリンの吸収を助ける栄養素です。
脂溶性ビタミンであるビタミンDは脂質に溶けやすく、余分なビタミンDは排出されず肝臓に蓄積されるので、ビタミンDを過剰に摂取しないようにする必要があります。
主食である総合栄養食にもビタミンDは含まれています。
さんまを与える際は適量にし、毎日与えるのは控えましょう。
ビタミンB12
ビタミンB12は、貧血の予防や認知症の予防、神経機能の維持に効果がある栄養素です。
犬のビタミンB12が必要な量はごく少量ですが、さんまにはビタミンB12が豊富に含まれています。
しかし、ビタミンB12は水溶性ビタミンで余分は尿へ排泄されるため、ビタミンB12を過剰に摂取したとしても心配はありません。
L-カルニチン
L-カルニチンはアミノ酸の一種で、脂肪燃焼やエネルギーをつくりだす働きがある栄養素です。
さんまにはL-カルニチンが多く含まれています。
オメガ3脂肪酸
オメガ3脂肪酸は、犬の体内で合成できない必須脂肪酸です。
さんまには、オメガ3脂肪酸であるEPAとDHAが豊富に含まれています。
EPAとDHAは脂肪が多い青魚に多く含まれますが、さんまは魚の中ではトップクラスにEPAとDHAの含有量が豊富です。
EPA(エイコサペンタエン酸)
EPAは血液をサラサラにする効果があるため、高血圧や動脈硬化などの予防をする働きがあります。
また、抗炎症作用の効果があり、犬の健康維持に欠かせない栄養素です。
DHA(ドコサヘキサエン酸)
DHAは脳の活性化をサポートする栄養素で、集中力や記憶力を高めたり、認知症の予防にも効果があります。
また、DHAは目の網膜の脂肪の構成成分でもあるため、視力の低下を抑制したり、目の症状を和らげるなど、犬の目の健康にも重要な栄養素です。
犬に与えるさんまの適量
さんまは栄養豊富な食材ですが、犬に必要な栄養素をすべて含んでいるわけではありません。
主食は総合栄養食のフードにして、さんまはトッピングやおやつとして与えましょう。
さんまは脂肪が多く、見た目よりもカロリーが高い魚です。
また、栄養素が豊富なため、過剰に摂取すると逆に健康を害するおそれもあります。
下記の目安を参考に、愛犬の様子を見ながらさんまを与えてください。
- さんまをおやつとして与える場合は、栄養バランスを崩さずに与えられる量として、1日に食べるフードの10%程度とします。(主食のフードが90%、おやつが10%です。)
- さんまをトッピングとして与える場合は、主食のフードを減らし、栄養バランスが崩れないように、1日に食べる主食の10~20%程度を目安とします。(主食のフードが90~80%、トッピングが10~20%です。)
年齢や活動量、健康状態によっても適量は違ってきますので、様子をみながら与えるようにしましょう。
また、さんまだけではなく他の食材もおやつやトッピングで与える場合は、その分も含めて主食・トッピング・おやつの割合を計算して与えます。
主食のドッグフードの適量については、こちらをご覧ください!
さんまの与え方
犬にさんまを与える際は、生ではなく加熱して与えましょう。
人間用に味付けしたさんまではなく、犬には調味料は入れずに焼くか煮るなどしたさんまを与えてください。
さんまの小骨をとりのぞいてから、身を細かくほぐして与えるとよいですね。
犬にさんまを与える際の注意点
犬にさんまを与える際に注意する点をご紹介します。
与えすぎない
さんまは脂肪が多く、見た目よりもカロリーが高いので、与えすぎると肥満の要因になります。
また、さんまは栄養素が豊富なため、過剰に摂取すると逆に健康を害する可能性もあるので、適量を守り、毎日与えるのは控えた方が安心です。
愛犬が欲しがるからといって、さんまを与えすぎないようにしましょう。
人間用に調理・加工したさんまは与えない
さんまを使った料理は塩焼きが代表的ですが、刺身や蒲焼き、炊き込みご飯もおいしいですよね!
また、加工品としてさんまの干物もお店に並んでいます。
ご家庭でさんまの料理をつくる時は、犬が欲しがっても人間用に味付けしたものは与えないようにしましょう。
さんまの塩焼きも、人間用の塩分では犬にとっては多いこともあります。
犬に与える際は、調味料を使わずに加熱したさんまを与えてください。
また、干物などの加工品を与えるのも避けましょう。
アニサキス寄生虫に注意する
さんまには「アニサキス」という寄生虫がいる可能性があります。
アニサキスは魚の内臓に寄生し、鮮度が落ちると身に移動するので、新鮮なさんまを選んで購入しましょう。
アニサキスを食べてしまうと、激しい痛みや嘔吐・下痢をひきおこすことがありますが、アニサキスは熱に弱いため、加熱することで死滅します。
愛犬が苦しむことがないよう、生のさんまは与えず、しっかり加熱してから与えましょう。
ヒスタミン食中毒に注意する
さんまには、アミノ酸の一種であるヒスチジンという物質が含まれていますが、常温で放置するなどして鮮度が落ちると、ヒスチジンがヒスタミンに変化します。
このヒスタミンを多量に摂取すると食中毒を引き起こすので、注意が必要です。
ヒスタミン食中毒になると、皮膚のかゆみやじんましん、嘔吐、下痢などの症状が出ます。
ヒスタミンは熱に強いので、加熱調理しても減ることはありません。
犬も人間も、鮮度のよいさんまを食べましょう!
アレルギーに注意する
アレルギー反応は個人差がありますが、さんまなどの青魚にアレルギー症状がでる犬もいます。
はじめて犬にさんまを与える際には、少量にして様子を見、他に新しい食材を与えないようにしましょう。
そうすることで、もしアレルギー症状がでた時に、どの食材が原因なのか特定できます。
- 皮膚が赤い
- 身体のかゆみ
- 特定の部位をかきむしったりかんだりする
- 毛が抜ける
- 嘔吐
- 下痢
- 1日のうんちの回数が多い
- 食欲不振 など
アレルギー症状は数日たってから現れることもあります。
少量づつ、愛犬の様子を見て与え、アレルギー症状がでた場合はさんまを与えるのはやめて、動物病院を受診しましょう。
まとめ
今回はさんんまについて詳しく解説しました。
さんまは栄養素が豊富なため犬に与えたい食材ですが、過剰に摂取すると逆に健康を害するおそれがあります。
与える際の適量や注意点などを参考にしていただき、愛犬と幸せなごはん・おやつの時間をお過ごしください!